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京都市北区西賀茂榿ノ木町31−2
院長 諸岡 憲(もろおか けん)
  1. またしても起きたワクチンを巡る我が国特有の風評被害
 

またしても起きたワクチンを巡る我が国特有の風評被害

2011年3月、未曾有の大地震が関東・東北地方を襲いましたが、この大地震が起きる数日前、日本の有力3大新聞(朝日、読売、毎日)が、一斉に、「ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン等の同時接種により、乳児が死亡」と、例によって、何らの医学知識も経験も研究歴も全く持ち合わせていない、ど素人である新聞記者が、何らの充分な医学的検証も行わずに、断定的かつ扇情的な記事を大々的に報道しました。言うまでもなく、またしても、「ワクチンの副作用」という、全宇宙に存在し得ない事象も反復記述していました。

ワクチンには作用・副作用は元々存在せず、反応・副反応しか存在しません コラム:ワクチンの「副作用」?参照)

 

彼らは、2011年1月から2月にかけて、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン(および/あるいは三種混合ワクチン)の同時接種を受けた計6名の乳児が、「同時接種を受けたことにより死亡した」と、受け取るしかない記述の報道を、一大センセーショナルに繰り広げました。

しかし、この不幸な乳児達には、彼らの記述していない真の死因が存在し、このことに関しては、一言半句の言及も見当たりません。

 

即ち、真の死因は、先天的心疾患による心不全が5名で、残り1名はミルク嘔吐の誤嚥による窒息死なのです。

即ち、死因は、予防接種とは全く無関係な、乳幼児突然死症候群と呼ばれる疾患分類に属するものであり、いわば、予防接種の「副作用」による死亡説は完璧に冤罪に相当するものなのです。

これらの事態を受け、厚労省は専門家を招集して調査委員会を開き(そもそもこの様な手間を掛けるまでもなかったのですが)、わずか2週間で、「同時接種と今回の乳児死亡には、直接的因果関係は存在しない」と言う結論に達し、4月1日に同ワクチンの接種は再開となったのです。

しかし、この再開決定に際して、上記の3大有力新聞(朝日、読売、毎日)は、翌日に数cm四方の、虫眼鏡でしか見えない程度の囲み記事を、わざと目立たないように(そうとしか思えない)、無関係なところ(政治経済欄等)に掲載したのみに留まり、勿論、一切の弁明や釈明はなく、ましてや、一言半句の謝罪すらありませんでした(勿論、副作用を副反応に訂正してお詫びする事もしていません)。

この馬鹿騒ぎは、欧米各国をはじめとして世界中の注目するところでもありましたが、VPD(ワクチンにて予防可能な疾患:既述)患者数増加を懸念する米国ワクチン専門家のPaul Offit氏に、「こんなくだらないことで中止にするなんて、日本の厚労省はFoolish(大馬鹿者)だ」(Forbes誌、3月10日掲載)と、言われてしまっても仕方有りません。

 

Paul Offit氏が、「Foolish」呼ばわりしている対象は、厚労省だけに留まらないのは明らかです。

日本のこの様な愚かな騒ぎは、今に始まった訳ではありません。

古くは、1989年の新MMRワクチン(麻疹Measles、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)Mumps、風疹Rubellaの新3種混合ワクチン)が運用された直後、副反応として、無菌性髄膜炎(ムンプス髄膜炎)が、数10~100例ほど続いたのを受け、中止に追い込まれました。このワクチンは、製造を急いだたために、他の2種のワクチンに、別製造のムンプス・ワクチンを混合したため、精製不十分になったことが原因であることが判明しています。

 

しかし、無菌性髄膜炎自体は、Hib髄膜炎のような細菌性髄膜炎と大きく異なり、殆ど後遺症も残さずに速やかに寛解治癒することがよく知られています。

本件において発生した数10-100例の無菌性髄膜炎の症例も、やはり、同様に、速やかに後遺症を残さずに寛解に至りました。

では、何故、このワクチンは中止に追い込まれたのでしょうか?

最大の原因を作ったのは、またしても、日本のマスコミ、特に、読売新聞です。

彼誌は、当時、「新3種混合ワクチンの接種男児死ぬ」と、例によって、ろくな検証もせずに、扇情的報道を展開しました。

 

真実は、全く違うことは言うまでもありません。

死亡した児は、確かに、予防接種の副反応としてのムンプス(無菌性)髄膜炎に罹患し入院加療となりました。

そして、約3週間で完全寛解(治癒)に至り、退院となっています。しかし、退院後のおよそ3週間後に再び高熱を来たし、再入院となり、翌日死亡となりました。

病理解剖の結果、脳内からインフルエンザウィルスが検出され、死因は、インフルエンザ脳炎と診断確定されたのです。

補足しますと、この当時、インフルエンザ迅速検査キットは勿論、タミフルも存在しなかった時代です。

 

つまり、インフルエンザに対して、迅速な確定診断ができないばかりか、適切な治療薬も存在していない時代だったのです。

両者共に20世紀終わり頃に漸く実用化されたばかりです。

また、当時の特筆すべき状況として、学校でのインフルエンザ予防接種の集団接種が、やはり、3大有力新聞(朝日、読売、毎日)を中心としたマスコミの身勝手な同ワクチンの有効性・安全性に対する批判攻勢(後の疫学調査から科学的にインフルエンザ予防接種は、充分以上の有効性と安全性を有していることは証明されています)を受けて、1983年に廃止となったことを見逃すべきではありません。

従って、当然この死亡した男児も含めて、当時の多くの子供達が、数年以上、全くインフルエンザ予防接種を受けていなかったのです(即ち、インフルエンザに対する抗体を全く有していなかったと考えられます)。

 

1989年から1995年にかけて、インフルエンザ脳炎が猛威をふるい、年間200名以上の同症による死亡者(しかも、殆ど6歳未満の就学前児童)を出したことを、後の2007年から2008年にかけての、「インフルエンザ脳症をタミフルの副作用呼ばわりした事件」の顛末を観れば、一般国民は勿論、優秀な日本のマスコミ諸氏も、もはや忘却の彼方に追いやっている様ですが。

私自身も、1991年12月から1992年3月にかけてのわずか4ヶ月の間に、岐阜大学医学部附属病院で4名(全て6歳未満)ものインフルエンザ脳炎による死亡を、主治医として、あるいは、チーム医療の一員として、経験しております。

このように状況を詳細に分析すれば、上記の児を含めて、当時の膨大な数のインフルエンザ脳炎死亡を生み出した原因は、インフルエンザ予防接種を中止したことにあることは火を見るよりも明らかであり、その責任は当然、1)軽率なマスコミ(インフルエンザ予防接種を中止に追いやった)、2)圧力に屈して中止した厚生省、および、3)マスコミに幻惑され暴走した一般大衆(国民)自身の3者にあることは、申し上げるまでもありません。

20数年を経た今でも、彼等(特にマスコミと厚生省)の犯した深い罪業は決して消えることはなく、また忘却の彼方に追いやるべき性質のものではありません。今一度再検証しその償いをさせるべきではないでしょうか。

 

以上のように、この新3種混合ワクチンを巡る報道は、今回2011年の「Hibワクチンと肺炎球菌ワクチン同時接種」の馬鹿騒ぎのケースと全く同じ性質のものであり、完璧な誤報道であるのは勿論、許し難き冤罪と呼ぶべきものです。

 

しかも、ご丁寧に、読売新聞のその後の対応も、2011年の場合と全く同様で、一切の謝罪も釈明もありませんでした(性懲りもなく、読売新聞系列のテレビは、2011年7月以降も「同時接種により重大な後遺症が残った」と、証明しようのないというか、論理的にあり得ない虚偽報道を未だに続けているようです。一体何の狙いがあるのでしょうか)。

 

新3種混合ワクチンの時も、低レベルなマスコミ報道に踊らされた一般大衆の圧力に屈し(司法の非科学的判決も大きく影響していますが)、厚生省(当時)は、ワクチンの製造法を見直すだけで何の問題もなかったはずなのに、早々と新MMRワクチン接種を中止し、現在に至るまで再開されていません。

この様な例は、インフルエンザ脳症を「タミフルの副作用呼ばわりしたり」(この件は、上記に若干触れましたが、いずれ機会があれば、詳しく述べます)とか、枚挙にいとまがありません。

 

日本の常識は世界の非常識です。

 

日本のワクチンを取り巻く状況は、欧米に比べ20年以上遅れています。


日本の医療を取り巻く状況がこのままで言い訳がありません。

 

東京大学医学部小児科学教授 五十嵐 隆氏、国立病院機構三重病院院長 神谷 齊氏をはじめ、日本のワクチンに関して長らく第1人者であり続けた諸先生は、現在の日本の状況を、一言で表せば、上記のように表現できると異口同音に、様々な場で発言しておられます。

 

例えば、2009年3月に上記の2氏の他、国立感染症研究所感染症情報センター長 岡部 信彦氏らが、「我が国の予防接種体制の問題点と将来への展望」と銘打った座談会を行い、その中で、

「我が国の予防接種体制は世界標準から大きく後れてしまっている状況にあり、これを「ワクチンギャップ」と呼ぶ」と指摘されており、更に、この様な状況を生み出した大きな原因として、

  1. ワクチンのベネフィット(恩恵)とリスクに対する、欧米人と日本人のとらえ方の違いがあり、この根本原因は、日本における、科学的・論理的思考能力を育てようとする教育制度の欠落にある
  2. 科学的思考能力の欠落した軽率で反省しないマスメディア
  3. 司法の予防接種後事故に対する非科学的判決が、厚労省行政に大きく影響している

を、挙げておられます。

3については、上記の座談会で直接の言及はなかったものの、2011年7月に行われた、「我が国のワクチン行政とプライマリ・ケア医の担うべき役割を考えるシンポジウム」で、日本赤十字社医療センター小児科部長 薗部 友良氏(ワクチンに関しての日本の第1人者の一人)が講演された中での発言です。

 

更に、この講演の中で、薗部氏は、「予防接種を阻む3つの誤解〜日本における「ワクチン接種の真実」を見極め、VPDの啓蒙と予防を」と、題して終始強い口調で訴えかけられました(詳細は、第2回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会を検索してみて下さい)。

 

薗部氏は、この講演において、「VPDの発症後には根本的な治療法がないのに、必要なワクチンを接種しないのはネグレクト、虐待だ」と、断言されています。

 

また、「日本では今でも有料の任意ワクチンが数多く、正確なVPDの疫学的データすら存在しない。この様な日本における予防接種制度の遅れの最大の原因は、司法の接種事故の非科学的な判決が、厚労省行政に大きく影響しているため」と、指摘されています。

 

また、薗部氏は、今回2011年3月にまたしても沸き起こった、「ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン同時接種に対する風評被害」についても述べておられます。以下、その講演の要旨です。

「同時接種の安全性は世界中で認められており、基礎疾患のある子供にこそ有益とされている。

普及すれば、保護者の付き添い通院などの利便性も高まり、接種率の向上にも寄与するだろう。

しかし、日本では今年3月にヒブ、肺炎球菌を含むワクチンの同時接種後に乳児の死亡例が相次いだことを受け、接種が一時中止される事態となり、世界中から関心が寄せられたが、VPD患者数増加を懸念する米国ワクチン専門家Paul Offit氏に、「こんなくだらないことで中止にするなんて、日本の厚労省はFoolish(大馬鹿者)だ」(Forbes誌、3月10日掲載)と(既述)、言われて蔑まれても仕方がないでしょう」

 

「最終的に両ワクチンおよび同時接種と乳児死亡との間に全く因果関係がないことが証明されてワクチン接種は再開されたが、接種率が中止前まで戻ってこない」

とも、発言され嘆いておられました。

そこで、この様な恥ずべき事態が昔から頻繁に日本だけで起きる理由として、上記の3つは勿論そうですが、さらに以下の様に分析され指摘されています。

 

誤解その1:VPDなんて罹っても大したことない?

VPDの臨床、医療経済上の「恐ろしさ」を、一般人は勿論、マスコミ諸氏や一部の医師ですら認識していないことは、日本だけで観られる不思議な現象である。

VPDでは、死亡を含む重症例が未だに起きていることが見過ごされがちだ。例えば、軽視されがちな水痘は、ワクチン発売前の米国では毎年17万5000人に合併症が発症、1万2000人が入院し、100人が死亡していたが、現在はワクチン2回接種で大幅に減少した。

しかし、日本では、任意接種のため極端に接種率が低い(日本での疫学データはありません。

但し、水痘は、まだゾビラックスと言う水痘・帯状疱疹ウイルスに対する特効薬が存在するだけまだましです)。他のVPDも同様で、発症すると現代医学でも経過観察しかしようがない場合が殆どである。

一方、臨床上の問題を放置すれば、医療経済上にも悪影響が及ぶ。VPDは容易に他人へ伝染し、医師は自然治癒を祈りつつ、最善の治療に追われる。即ち、本来ワクチンで防げたはずのVPDであるから、ワクチンの費用対効果は皆高い。

 

誤解その2:任意だから打たなくても大丈夫?

日本は「任意接種ワクチン」として、ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、インフルエンザ、子宮頚癌、水痘、流行性耳下腺炎を扱っている。

それに対して、WHOは、これらのワクチンをいずれも「先進国では全て定期接種に入れるべき」と位置づけている。

「任意」と伝われば、「自己判断で自由に」「必要性は低い」とも受け取られがちであり、理解がこう成されているとすると、諸外国における認識とは随分とギャップがある。

 

誤解その3:むしろ副作用(副反応の間違い)の方が危険?

「ワクチンの副作用(副反応の間違い)がより怖い」と思う日本人が余りにも多すぎる。

接種後の有害事象(真の副反応)には、「ワクチンによる有害事象(真の副反応)」と偶然の「有害事象(偽の副反応、紛れ込み事故)」とがある。両者を決して混同してはならないが、日本では「接種後に観られたこと(有害事象)=副作用(副反応の間違い)」と思い込まされている(この思い込ませている張本人は、上記に掲げたごとくマスメディア、教育、および、司法に踊らされる官僚行政の3者であり、彼らに全面的責任があることは明らかです)。

 

米国のACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会)が2008年に発表した資料では、経口ロタウィルスワクチンとプラセボ(偽のワクチン。ゼリーなどの食品を用いることが多い)を投与して両者を比較しても、発熱、不機嫌、咳や鼻水、食欲不振などの発生率に差はないと言うデータがある。

ワクチン接種後に熱が上がった、咳や鼻水が出た、発疹が出たと言って、直ちにワクチンの問題と捉えるのは正しくない。

今までワクチンの重大な副作用(副反応の間違い)と疑われてきたことの殆どは、冤罪であることが分かってきている。

 

現在のワクチンで健常な小児に観られる「真の副反応」は、局所反応(DPTワクチンで約30%など)、発熱(麻疹で約6%、肺炎球菌ワクチンで約10%)などで、これらはいずれも軽微な副反応であり、ごく希な重大なものに、脳炎(流行性耳下腺炎)、骨炎(BCG)、ポリオ関連麻痺(ポリオ)、アナフィラキシーショックなどがあるが、いずれも発生確率は、航空機が落ちる確率よりも更に10万分の1以下に少ない。下痢や咳などは、他の感染症による症状であることが殆どである。

結論として、VPDの正しい実態を知り、その上で、ワクチン接種の意義を見直すべきだと、薗部氏は訴えています。

 

 

この様に、日本でもワクチン専門家の諸氏は、日本の状況を憂い常にことあるごとに発言し、状況を変えようと努力してきていますが、未だに状況は余り変わりません。

 

重要なのは、日本人一人一人(マスコミ諸氏や一部の医師も勿論含む)が、「このままでは世界から取り残される」という危機感を今すぐ覚えるべきことだと、私は考えます。